間違い電話の向こう側

芸術・その他雑記

払わなければいい

現在、映像制作の料金未払いに遭っていて、面倒臭いことになってきている。完成データはすでに納品済みで、後は金を払ってもらうだけなのだが、何度メールしてもほとんど返って来ず、返ってきても「経理に確認します」だの「○日に支払います」だのと言うだけで一向に払わない。電話も全く繋がらない。

 

今まで前金を取らずにやってきた自分も認識が甘かった。所詮アマチュアだからと、契約書も作らずに適当にやってきたツケが回ってきたらしい。見ず知らずの人間から依頼があった場合、こういうことが起こる可能性を考えておかねばならなかったのである。次からは必ず前金を取るなり依頼者の口座を控えるなりするつもりだが、すでに起こってしまったこの状況をどうするか考えなければならない。

 

こういう場合、まずはメールや電話で問い合わせをして、それでも相手が払わないのであれば、請求書を内容証明で送って、最終的には少額訴訟、財産の差し押さえという形になるらしい。しかし、調べれば調べるほど日本の法律というのは踏み倒しをする債務者に甘くできていて、「何を言われようが払わなければいい」と開き直った相手から合法的に金を取るのは非常に面倒臭いのである。

 

今回のような少額の未払いだと、弁護士を雇うと出費の方が大きくなってしまうので、面倒臭い手続きを全て自分でやらねばならず、理不尽な作業を強いられることになる。そんなことをするぐらいなら、もう金は諦めて、他の仕事にでも精を出した方がよっぽど収入に繋がるという場合もあるだろう。実際、弁護士のサイトなどを調べていると、「未払い金が少額なら諦めましょう」などと書いてあるところもあり、ふざけているのかと思った。自分の場合、少額訴訟を起こせば勝てるだろうが、調べてみると、勝ったところで金をすんなり取れるとは限らないということが分かり、こういった面倒な事情から、債権者側もできれば訴訟はしたくないという人が多いのではないかと思った。

 

自分の場合、近日中に内容証明を送ることになると思うが、内容証明には何の拘束力もなく、言ってみれば「訴訟の準備段階に入った」という軽い脅し程度の効果しかない。そして、訴訟に勝ったとしても、債権者は相手の口座などを自分で調べなければならない。さらに、もし口座が分かったとしても、相手が口座に金を入れていなければ当然差し押さえできない。また、自宅にある現金は額が66万円以下だとこれも差し押さえ不可。給料からは手取り額の4分の1までしか取ることができない。こんな有様では抜け穴なんかいくらでもあるに決まっている。

 

日本弁護士連合会が2015年に行ったアンケート調査によると、殺人などの重大犯罪について、賠償金や示談金を満額受け取ったという回答はゼロ。6割の事件では、被害者側への支払いが一切なかったという。単なる仕事の賃金未払い程度ならまだしも、殺人などの被害者遺族に対してもこんなことがまかり通るというのはどう考えても法律がおかしいとしか思えない。こんなものはれっきとした犯罪者なのだから、そんな人間が賠償金を「払いなさい」と言われて「はい払います」と素直に払うわけがないではないか。なぜ法を犯した人間の善意を前提とするような構造になっているのか理解に苦しむ。

 

現在、この問題に関しては、法務省民事執行法改正のための中間試案が出ているそうなので、このような理不尽な状況が少しでも改善されることを期待するしかない。本来なら自分はこんな難しい法律の問題などに関わるような人間ではないのだ。こんなやりたくもないことをやらされる破目になって本当にうんざりする。